堕落論

坂口安吾堕落論を読んだ(「堕落論」および「続堕落論」、文庫本で32ページほど。そういえば作者が死んでから60年ほど経ってるから青空文庫にありますね)。僕の理解能力では全部を掬えなかったと思うけれど、それでも強く印象に残った。人間(というより日本人)の行動原理と共存の仕方について考えるきっかけになった。

タイトルに「堕落」とついていて、このごろこの高3と同じようにいろいろ考えては病んでいた僕は「堕落」に共感のようなものを覚えて手に取った。しかし中身は、一般的にいわれる「堕落」について語っているものではなかった(と思う)。

この論の主張は「日本の歴史は日本人の根底にある<集団心理>が作ってきた」というものだと読んだ。それ自体は目新しいものではないかもしれないけれど、第二次世界大戦の時の日本について「結局はこういうことだろ」っていう主張を比較的終戦のすぐあとに発表したのだと思うとより深く自分に突き刺さってきた。人の気持ちって不思議だなぁと思ったことがある人は読んでみると面白いと思うかもしれない。(読んでもわけわからない場合も多いと思うし、そんなの当然だろって思う人も多いと思うから読まなくても別にいいとは思う)

僕が特にハッとした部分は以下の文章。

 藤原氏や将軍家にとって何がために天皇制が必要であったか。何が故に彼等自身が最高の主権を握らなかったか。それは彼等が自ら主権を握るよりも、天皇制が都合がよかったからで、彼らは自分自身が天下に号令するよりも、天皇に号令させ、自分が先ずまっさきにその号令に服従してみせることによって号令が更によく行きわたることを心得ていた。その天皇の号令とは天皇自身の意志ではなく、実は彼等の号令であり、彼等は自分の欲するところを天皇の名に於て行い、自分が先ずまっさきにその号令に服してみせる、自分が天皇に服す範を人民に押しつけることによって、自分の号令を押しつけるのである。

坂口安吾 続堕落論

 そんな昔から集団心理が見事に利用されていたのか、と驚いた(そして摂関政治は中学の時から知ってたのにそういうからくりに気付かなかった自分が恥ずかしくなった)。

世の中をもっと知りたいなぁと思った。

 

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坂口安吾 堕落論

坂口安吾 続堕落論